『星月夜の鬼子母神』 篠 綾子
またも「鎌倉殿の13人」繋がり
鎌倉殿では、佐藤二朗氏の怪演?すさまじかった
比企能員の娘であり
2代将軍頼家の側室となった「せつ」は
りりしくて、愛にあふれた女性として
描かれていました。
本作での名前は早苗、のちに若狭の局となっています。
このあたりの時代、特に女性の呼び名だったり
経歴だったりは史書と呼ばれるものでも
相違があることしばしば。
公暁や竹ノ御所も若狭の局所生説があるようです。
そもそも、源頼朝や北条義時の死因でさえ、
これという証明がないくらいですから・・・
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源氏に関わった比企の女たちの悲運
源頼朝の乳母、比企の尼から連なる
一大豪族の比企一族の姫、早苗は
勝ち気なしっかり者。
頼家とは幼なじみの関係から
いずれ妻となり
長男、一幡を産みますが、
その勝ち気さゆえか
2代将軍となった頼家との関係は
遠ざかっていきます。
そして、いよいよ
早苗が幼い頃から見ていた
源氏と関わった比企一族の女たちの悲運が
若狭と、なにより大切な息子、一幡に
襲いかかるのです。
女としての愛も
母としての愛も
人としての誇りも
権力に呑み込まれていったのは
思い出の星月夜でした。
集英社文庫 2021年初版