『竹ノ御所鞠子』 杉本 苑子
「鎌倉殿の13人」には出てこなかった姫のお話。
悲劇の2代将軍(3代目も大悲劇ですけど)の忘れ形見、
蹴鞠が好きだった頼家が名付けたのか
姫の名は「鞠子」
木曽義仲を祖父に持つ、美しく優しい姫は
どす黒い陰謀渦巻く鎌倉御所からは
竹の茂みで隔離された「竹ノ御所」で育つ。
2代将軍頼家の息子達が
一人二人と政略の闇に消えていく中、
姫ゆえに静かに慎ましく、
その生を全うしていけるものと
思われたのに・・・
価格:946円 |
「鎌倉殿の13人」でも話題の闇落ち執権、
北条義時。
チャーミングな尼御台として描かれている
北条政子。
本作中のこの二人はやはり悪役キャラで、
権力の毒牙はやがて竹ノ御所まで
忍びより、悲しい結末を迎えることになる。
源氏の征夷大将軍を頂点に
武家社会の礎を築いた鎌倉幕府。
朝廷と争い、利用した北条氏。
権力の大きな渦のなかに
小さな笹舟は飲み込まれ、
姫とともに源氏将軍家の血筋は
消えた。
後の戦国時代の姫達も
家の為に人質同様に嫁ぎ
跡継ぎ争いの中心に立たされ
悲運も幸運も権力の行方次第。
それでも「戦国の姫」としての矜持を胸に
戦っていた。
鞠子のように、
一時は世に忘れられたように捨て置かれ、
思い出したかのように表舞台に引っ張り出され、
それまでの愛しいものすべてを奪い去られては
生きる意味も見いだせまい。
「女」ゆえの悲哀が詰まった1冊。
中央文庫 1994年初版